化学工学論文集
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分離工学
嫌気条件下における活性汚泥の膜濾過特性の変化と有機酸の産生
片桐 誠之 山内 一也川崎 健二入谷 英司
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2017 年 43 巻 4 号 p. 289-295

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抄録

活性汚泥による模擬廃水の嫌気処理を種々の条件で行い,汚泥懸濁液の膜濾過特性と産生される有機酸量を測定した.汚泥懸濁液と遠心沈降によって汚泥を取り除いた上澄液の膜濾過挙動を比較したところ,いずれもケーク濾過の挙動となったが,処理開始時には汚泥の影響が顕著で両者の濾過速度に明確な差異があったのに対し,嫌気処理を続けていくとその差が小さくなった.嫌気条件下で産生される代謝物が膜ファウリングに影響をおよぼす主要な因子となるものと考えられ,代謝物の蓄積を防ぐために一定期間ごとに処理水と未処理の廃水とを置換する方式で処理を行うと,生成される濾過ケークの平均濾過比抵抗が小さくなることがわかった.一方,処理水中には代表的な有機酸である酢酸が検出され,酢酸の産生量が大きくてもケークの平均濾過比抵抗を小さくできたことから,バイオガスなどのエネルギー回収において重要な指標となる有機酸産生の効率化と汚泥の分離性能の向上の両立が可能である.さらに,有機炭素濃度は一定で,タンパク質量と糖質量が異なる廃水の嫌気処理を行ったところ,酢酸の産生量には大きな違いがなかったが,濾過挙動は廃水の組成の影響を大きく受け,糖質が多いと平均濾過比抵抗が増大した.このとき,処理水中にはタンパク質と糖質の両成分が検出され,濾過比抵抗が大きい場合にはタンパク質と糖質の含有量がともに大きくなる傾向にあった.なお,代謝物の蓄積を防ぐと,廃水の組成や処理槽内の汚泥量に関係なく平均濾過比抵抗は同程度となり,汚泥の効率的な膜濾過が実現可能なことが明らかとなった.

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© 2017 公益社団法人化学工学会
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