2003 年 29 巻 5 号 p. 628-634
主として無害化処理後の絶縁油に含まれる微量のPCBを,測定妨害成分である鉱油成分から簡便迅速に分離し測定するため,カラムクロマトグラフィーを用いた前処理法について検討した.カラムの充填剤としてアミノプロピル(NH2),シアノプロピル(CN),ないしは2,3-ジヒドロキシプロポキシプロピル(DIOL)を用いた時,鉱油成分の除去率は99.96%にとどまることがわかった.これは,絶縁油に含まれる0.05ppmのPCBを測定する際に要求される鉱油成分の除去率(最大で>99.995%)に満たなかった.そこで,鉱油成分の除去率を向上させるため,展開溶媒の変更,充填剤の変更,およびプレカラムの付加について検討を行った.その結果,シリカゲルを充填したプレカラムを付加することにより,鉱油成分の除去率を目標値である99.995%まで高めることに成功した.新たに開発した手法を0.05ppmから3.5ppmのPCBを含む鉱油試料および化学処理後の絶縁油試料に適用した結果,いずれもPCBを同定・定量できた.また同一試料について本法と公定法との比較を行い,両者の測定値に統計的に有意な差がないことを確認した.以上より,本法は絶縁油試料への適用が可能であり,その測定値は妥当であると評価された.