1991 年 17 巻 1 号 p. 88-94
核DNA同様細胞S期に1回複製されるYEpベクターを保持したSaccharomyces cerevisiaeを栄養増殖させ, ベクターにコードされる大腸菌由来β-ラクタマーゼ (bla) の活性を追跡することで, 遺伝子量一定条件下での産物量変化について考察した.細胞周期の観点から, 同酵素の活性変化を数式で表すことにより, 細胞当たりの活性はコピー数に関係なく増殖とともに増加または減少し得ることを示した.この増減は植菌時に定まるように思われた.その傾向を左右しているのは種菌の培養齢であり, 対数増殖期の細胞を植えると増殖とともに減少するが, blaのターンオーバーが進んでいる停止期のものでは増加することが見出された.コピー数一定のベクターを用いた場合でも細胞当たりの産物量は変わり得ることから, 遺伝子産物の量からコピー数を評価することは困難であることがわかった.