日本化學雜誌
Online ISSN : 2185-0917
Print ISSN : 0369-5387
ISSN-L : 0369-5387
光核反応による数種の希土類元素混合物の放射化分析
岡 好良加藤 豊明永井 巌
著者情報
ジャーナル フリー

1967 年 88 巻 8 号 p. 871-875

詳細
抄録

20MeV制動輻射によって希土類元素を照射したときに主反応として生じる(γ,n)反応生成物を利用し, ランタン中のセリウムテルビウム中のガドリニウム, およびエルビウム中のツリウムをそれぞれ非破壊分析する方法を確立した。
既知混合比のランタン-セリウム(CeO2/La2O3 0.0065~0.8wt%),テルピウム-ガドリニウム(Gd2O3/Tb4O7 0.052~2.7wt%)およびエルピウム-ツリウム(Tm2O3/Er2O3 0.05~2wt%)混合試料を20MeV制動輻射でそれぞれ1時間照射し,γ線スペクトロメトリーによって定量する際にできるだけ鋭敏でS/N比を大きくする測定条件を求めた。
照射後, 短寿命核種の滅衰をまてば主成分のランタンおよびテルビウムからは光核反応生成物の残留は認められず, 139Ce(半減期140日)の0.166MeVのγ線あるいは159Gd(半減期18時間)の0.363MeVのγ線の光電ピーク面積を測定してそれぞれの定量が行なわれる。各試料に金バクを添付し, 197Au(γ,n)196Auの生成量によって制動輻射線束密度の差異を較正してcpm(139Ce 0.166MeV)vs. mg(CeO2)およびcpm(159Gd 0.363MeV)vs. mg(Cd2O3)を求めよい直線関係を得た。定量下限はセリウムおよびガドリニウムについてそれぞれ約5μgおよび約2μgである。試料をホウ素で被覆して光中性子に基づく(n,γ)反応生成物の寄与を減らせば, さらに定量感度は向上する。
エルビウム中のツリウムではエルビウムを制動輻射線束密度の内部モニターとし162Er(γ,n)161Erの生成量によってその差異を較正した。すなわち, 照射終了時に換算した放射能計数率の比, cpm(168Tm 0.198Mev)/cpm(161Er 0.826MeV)と混合重量比,Tm2O3/Er2O3との関係を求めよい比例関係を得た。実試料の分析にあたっては照射と測定の条件を混合試料の場合と同一にして放射能計数率の比を求めればツリウムの含量を知ることができ, 本法により酸化エルビウム100mgに含まれる約10μgまでの酸化ツリウムを非破壊分析できる。

著者関連情報

この記事は最新の被引用情報を取得できません。

© The Chemical Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top