日本化學雜誌
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あおき配糖体アウクビンの化学構造の再確認
藤瀬 新一郎小島 英幸
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1961 年 82 巻 8 号 p. 1110

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抄録

さきにあおき配糖体アウクビンに対して 1 の構造をあたえ,Grimshaw らおよび Schmid らにより一応支持されたが, Schmid らは II 式のほかに皿式の可能性のあることを指摘した。
すでに報告したように,.テトラヒドロアンヒドロアウクピゲノンを過安息香酸で酸化し,得られたラクトンをさらに酸性で過マンガン酸カリウムにより酸化してパラコン酸(III)を得準が,このパラコン酸の生成は II 式では説明するととができない。またアセチルアウクビン(VI) の赤外吸収スペクトルを,フッ化カルシウムプリズムを使用して測定すると,図1のようになる。すなわち含酸素環二重結合の二つの C-H 伸縮振動が 3108-1 および 3068cm-1 にあらわれ,炭素 5 員環二重結合の一つの C-H 伸縮振動が 3018cm-1 にみとめられる。酸素が直結した炭素二重結合の C-H 伸縮振動は,通常値より高波数域にずれることはよく知られているが,念のため含酸素環に二重結合のないプロムメトキシヘキサアセチルアウクビン(V)の赤外吸収スペクトルを同じ条件でとると,前 2 者の吸収が消え,第 3 番の炭素 5 員環二重精命の一つの C-H 伸縮振動に和当する吸収のみが残る。以上の現象は炭素 5 員環に 4 置換二重結合の在在する II 式では説明することができない。したがってアウクビンの化学構造はさきに報告した I 式が正しいものと考える。
終りに赤外吸収スペクトル測定に際し,いろいろ御協力下さった東大学非水溶液化学研究所網巻研究室に感謝致します。

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