日本化學雜誌
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多結晶性固体の熱分解速
橋本 栄久
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1961 年 82 巻 12 号 p. 1605-1611

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抄録

多結晶固体粉末の熱分解速度式を誘導した。粉末はさらに小さい Grain からなり, Grain Boundary に逐次核発生が起って粒子内部に伝播してゆく過程と,個々の Grain がそれらの表面から反応する過程のニつが併行して進行するものと考える。最初粒子外表面およびそれに近い場所にある粒界で核発生が起るが,反応の終った場所には間隙が出現して気体の通路を提供するので,より奥深い位置の反応が起り得るようになる。このような系について,Boundary反応が粒子の芯部に到達するまでの時間をtc,1個の Grain が反応を終るのに要する時間を toとし,またある時刻を考えたときそれ以前の反応によって核発生の誘発され得る Grain Boundary の展開される割合δを考え,δ=0,δ_=_0の場合,さらに後者については δ<<1,δ>>1 のおのおのの場合について,時間 t<to,tc, to>t>tc, tc>t.>to の期間における速度を考察した。つぎに 1 個の粉末中の Grain が小さく,かつそれらの反応してゆく幾何的な分布が“atrandom ”な系について,発熱分解で分枝反応として知られているのと同型の式が,近似的に得られることを示した。最後に分解率α と t の曲線が粒径によりいろいろと変化するようすを考察した。S字曲線の変曲点,すなわち(dα/dt)maxの価が粒径に依存するが,ある粒径のとき,tc>toの系では極大を,to>tcの系では極小を持つことを示した。同時に速度が最大になるときのαの価も粒径によって変化し,極大値を持つことが示された。

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© The Chemical Society of Japan
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