日本化學雜誌
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イオン放射の化学的研究 (第3~4報) (第3報) 加熱固体からの陽イオン放射機構
湯朝 俊美
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1958 年 79 巻 8 号 p. 996-999

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抄録

既報ならびに次報の実験結果に対する考察基準 (理論) を設け, 実験と理論をたえず比較検討しながら両者のより正しい発展を図る目的から, ここに加熱固体からの陽イオン放射現象の主なものを取り上げ, 放射機構の解明を試みるとつぎのことが推論される。着目すべき対象は固体表面と反応分子の形態 (単原子分子M, 二原子分子MX等) で十分であり強いて固体内部まで考える必要は認められない。放射の諸現象を理論的取り扱い上から整理するとM形とMX形に分類でき, M形に寄与する因子は金属表面の電子仕事関数φ, M原子のイオン化電圧ろ温度Tであり, MX形ではさらに解離エネルギーDが加わる。M分子が加熱金属線に衝突電離する場合, 加熱固体から不純物イオンが蒸発する場合, および加熱金属からそれ自身の陽イオンが蒸発する場合はM形に属し, Sahaらの式によりこれら相互の関連性がもたれる。MX形に属する場合はMX分子が加熱金属線に衝突電離する場合, および固体試料を塗付した担体の加熱により試料イオンが蒸発する場合であり, M形でおこる反応過程を包含する。

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