日本化學雜誌
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ケトンの接觸反應(第3報)
藤井 了堅
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1948 年 69 巻 10-12 号 p. 151-154

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抄録

以上第2,第3報に掲げた結果を要約すると
1. 週期率の第III屬アルミニウム,第IV屬チタン,第V屬ヴァナヂン,第VI屬クロム,第VII屬マンガン及び第VIII屬鐵の各酸化物を觸媒とする350-360°Cに於けるアセトンの常壓氣相接觸反應に於いては,先づ2分子縮合體のメシチルオキサイドが生成し,ヴァナヂン,マンガン及び鐵觸媒では比較的安定にメシチルオキサイドが殘存するが,アルミニウム及びチタンではこれが更にアセトンと脱水縮合を起してメシチレンを生成する。獨りクロムのみは兩者の反應生成物を生じ稍例外の性質を示す。又イソブチレンは總ての觸媒により生成する。
2. アセトンのメチル基を他の基で置換したケトンではチタン,クロム,マンガンによつてアセトンの場合と全く同型の生成物即ちメチルエチルケトンからは2分子縮合體の3-メチルヘプテン-(3)-オン-(5),3分子縮合體の1,3,5-三エチルベンゼン及び2分子縮合體よりの分解物の2-メチルブテン-(1)を,アセトフェノンからは2分子縮合體の閉環で生じた2,4-二フェニルフランと3分子縮合體の1,3,5-三フェニルベンゼン及び2分子縮合體よりの分解物のイソプロベニルベンゼンを生成する。
3. CH3CORで表はされるケトンよりの2分子縮合體不飽和ケトンの収率はマンガン>クロム>チタンの順を示し, 3分子縮合體の芳香屬炭化水素の収率はクロム>チタン>マンガンの順で何れのケトンも全く同じ傾向を示している。
4. CH3CORの2分子縮合體不飽和ケトンと水との反應による不飽和炭化水素への分解はチタン>クロム>マンガンの順に進行しどのケトンも同じ傾向を示している。
この研究に使用した酸化物觸媒の週期率の屬を異にする元素の中,同型の遷移元素酸化物(V2O3*, Cr2O3, Mn2O3, Fe2O3)では何れのケントからも2分子縮合體を生成し,それが比較的安定に殘存するのに對し,典型元素の酸化物ではケトンの3分子以上の縮合體を生成す測出來する。
又同型の遷移元素の酸化物の中でもクロムが特に強い活性を示すが,クロムが錯化合物を作り易い元素であることを考へ併せると,この接觸反應では先づケトンが觸媒の元素と不安定す錯化合物を作ることが豫想せられるが,この反應機構の詳細に就いては今後の研究に讓り度い。

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