1942 年 63 巻 10 号 p. 1299-1302
重酸素の濃縮せられた水を用ひ,中性水溶液中に於ける蔗糖と水との間に於ける酸素原子の交換反應を研究した.其の結果に依れば,蔗糖分子中の酸素原子は水分子中のそれと殆ど交換反應を行はざることを知つた.即ち蔗糖の中性水溶液を55°に100時間加熱するも水分子のそれと交換反應を惹起する酸素原子の數は蔗糖1個分子に就き約0.1個に過ぎず,それは實驗誤差の範圍内にある.それで更に反應温度を100°にしたるに,此の時は蔗糠は徐々に加水分解を惹起し,それと並行して蔗糖1個分子に就き2個の酸素原子が水のそれと交換せられることを見た.之等の結果は次の如く説明することが出來る.即ち蔗糖分子中にはアルデヒド基の酸素原子が存在せざるにより, 55°に於ては酸素原子の交換反應が殆ど行はれざるき, 100°に於ては徐々に加水分解を起して葡萄糖及び果糖に轉化し,之によつて生成した葡萄糖及び果糖分子中のアルデヒド基或はケント基の酸素原子が第一報に記したると全く同樣の機作によつて水分子の酸素原子と交換反應を行ふものである.
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