工業化学雑誌
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ダイヤフラムセルにおける反応を伴うイオンの移動
恩田 格三郎小林 猛藤根 道彦高橋 正博
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1971 年 74 巻 10 号 p. 1961-1966

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抄録

ダイヤフラムセル内で 25℃の水溶液中における塩酸-水酸化カリウム, 塩酸-水酸化リチウム, 硫酸-水酸化カリウム系の3種類の中和反応を行なわせ, 瞬間反応を伴う場合のイオンの移動について実験的に研究した。一方, 境膜モデルに準拠した理論解として各反応成分がイオン拡散に従う場合と分子拡散に従う場合の2通りについてそれぞれ求め, 実験結果と比較した。
まず実験結果をイオン拡散とした場合の理論解と比較したことろ, 各成分の拡散係数に無限稀釈水溶液における値を使用したにもかかわらず本実験範囲内 ([OH-濃度]/[H+濃度]≦8)では, ±5%の誤差内で一致することが認められた。他方, 分子拡散に従うとした場合の理論解との比較においても, 実験結果はイオンとしての拡散係数と分子としての拡散係数の違いが小さい場合には ±8%の誤差内で一致するのが認められた。しかし H+のように他のイオンと対になって分子として拡散する場合の拡散係数とイオンとして拡散する場合の拡散係数の間に大きな違いがある場合には, 分子拡散として考えると [OH-濃度]/[H+濃度] が大きくなる程, イオン拡散とした場合よりも実験結果との違いが大きくなるのが認められる。このようなことから物質移動現象をより正確に表わすためにはイオン拡散として考えた方がより妥当であるものと思われる。

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