工業化学雑誌
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3-ブロム-3-ブロムメチルスクシンアミド酸残基を有する反応性染料
飯田 弘忠飯田 博子吉原 憲二
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1964 年 67 巻 1 号 p. 114-118

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抄録

反応性染料を合成するのが目的で,アシル化できるアミノ基を持った水溶性染料に,2-ブロム-2-ブロムメチル無水コハク酸(I)を反応させて数種の染料を合成し,その染色性を検討した。得られた染料を1%,炭酸ナトリウムを4%含む染料水溶液をビスコースレーヨン布にパッドし,140℃に10分間乾熱処理すると,布に吸収された染料の約20%が繊維と結合した。羊毛1部を,0.01部の染料,0.02部の酢酸ナトリウム,0.02部の酢酸,0.1部の硫酸ナトリウムを含む染料水溶液50部中に浸漬し,約100℃に45分間加熱すると,使用した染料の約38%が繊維と反応した。2-ナフチルアミン-7-スルホン酸を水溶液中でIと反応させると,N-(7-スルホ-2-ナフチル)-3-ブロム-3-ブロムメチルスクシンアミド酸を生じた。2-ナフチルアミンをアセトン中でIと反応させると,N-(2-ナフチル)-3-ブロムメチルマレインアミド酸(mp153~154℃)(IV)を生じたが,この反応をクロロホルム中で行なうとN-(2-ナフチル)-3-ブロム-3-ブロムメチルスクシンアミド酸(mp123~124℃)(V)を生じた。またIVまたはVにアニリンを反応させると,N-(2-ナフチル)-3-アニリノメチルマレインアミド酸(mp172~173℃)なる同一化合物を得た。このことはアニリンとの反応の際にV1分子より臭化水素1分子がまず脱離してIVとなり,これがアニリンと反応したことを示している。以上の実験事実から,本実験で得られた反応性染料の主成分は3-ブロム-3-ブロムメチルスクシンアミド酸のN-置換体ではあるが,繊維との反応の際にはこの化合物1分子よりHBr1分子が脱離して3-ブロムメチルマレインアミド酸のN-置換体となり,これが繊維と反応するものと考えられる。

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