工業化学雑誌
Online ISSN : 2185-0860
Print ISSN : 0023-2734
ISSN-L : 0023-2734
水酸化アルミニウムの析出反応機構に対する考察
下里 純一郎
著者情報
ジャーナル フリー

1963 年 66 巻 2 号 p. 172-177

詳細
抄録

アルミン酸ナトリウム溶液からの水酸化アルミニウムの析出反応の複雑性は,その反応機構からある程度の解釈を下すことができる。本報においては反応機構に関する二,三の理論を述べ,ついで前報において得られた実験より反応速度式を近似的に求めて,その反応機構を推察し,更に前報までの諸実験事実に適用させて,これらを説明した。得られた結論は次のごとくである。(1)反応速度は過飽和度の2乗および1乗に比例する項から成立っており,前者は結晶成長速度,後者は核生成速度を表現する。過飽和度の大なる範囲では重合アルミン酸イオンの濃度に依存する項も含まれる。(2)結晶成長速度は高温程大で,アルカリ濃度200g/l付近で最大になる。この最大点を生ずる原因は,濃度によって変化する溶液中のイオンの易動度と,イオンの数が結晶成長速度に影響を及ぼすためと考えられる。(3)核生成速度は高温,かつ希アルカリ濃度ほど大となる。(4)アルカリ濃度が大きな条件で得られる結晶は,不安定で機械的に破壊され易い。

著者関連情報

この記事は最新の被引用情報を取得できません。

© 社団法人 日本化学会
前の記事 次の記事
feedback
Top