工業化学雑誌
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チタン酸バリウム単結晶中の不純物の影響
和久 茂
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1961 年 64 巻 2 号 p. 272-282

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抄録

フッ化カリウム融剤法でチタン酸バリウム単結晶を育成する際,酸化第二鉄を添加しないと得られる単結晶の体積固有抵抗が低くなる原因をしらべる目的で, 純度のことなる4 種の原料を用いて酸化第二鉄を添加しないで単結晶の育成を行なったところ,どの原料を用いた結晶でも育成したままの状態では十分高い体積固有抵抗をもっていた。しかし体積固有抵抗の温度変化を測定するため,直流電圧を加えたままで140℃ まで加熱し,更に室温まで冷却すると,純度の低い原料を用いて育成した単結晶ほど常温復帰後の体積固有抵抗は初期状態の値より著しく低い値を示すようになることを見出した。この原因が何によるかを探求するために,高純度のチタン酸バリウム原料に12種の元素の酸化物を別々に添加して単結晶を育成し,体積固有抵抗の温度変化を測定した結果,この現象の原因は,原料中に微量の五価の不純物(Nb2O5,Ta2O5)が含まれていて,そのために結晶育成中に還元されて酸素の欠けた格子点が出来ることによることがわかった。5価の不純物とちょうど原子価の補償が出来る程度の3価の不純物が混存するときには,このような現象は見られない。

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