日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
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グラファイト層間における金属微粒子の生成機構
塩山 洋榊原 裕之
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1996 年 1996 巻 8 号 p. 673-679

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抄録

グラファイト層問における金属微粒子形成の反応メカニズムについて紹介する。各種の金属塩化物-グラファイト層間化合物(GIC)をリチウム-ナフタレン-有機溶媒の混合物中に浸漬すると,グラファイト層間で金属塩化物が還元されて金属の微粒子が生成する。この金属微粒子の粒径を, X 線回折図形の線幅と透過型電子顕微鏡像より見積もった。その結果粒径は,微粒子の前駆体がグラファイト層間を移動する際の活性度によって決定され,それは金属の融点や反応温度に依存することが明らかになった。このメカニズムによると,出発物質である GIC のステージ数が小さいほど,得られる金属微粒子の粒径は大きいという実験事実もよく説明できる。粒径は還元反応に用いる溶媒によっても影響を受ける。溶媒の分子がリチウム原子と共に GIC に層間挿入される場合は,比較的大きな金属微粒子が得られた。また TEM 像を詳しく解析すると,グラファイト層間で得られる金属微粒子は,硬貨の形状をしていることが分かった。このようにして得られた複合材料は触媒としての応用が期待できる。

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