日本化学会誌(化学と工業化学)
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フルオラン化合物のサーモクロミズムにおけるアルキルホスホン酸のアルキル鎖長の効果
筒井 恭治山口 岳人佐藤 清隆
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1995 年 1995 巻 1 号 p. 68-73

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抄録

フルオラン化合物(FD:2'-(o一クロロアニリノ)-6'-ジブチルアミノスピロ[イソベソゾフラン-1(3H),9'-[9H]キサソテン]-3-オン)のサーモクロミズムに対するアルキルポスホン酸(Pn;nは炭素数)のアルキル鎖長の効果を調べた.P14~22とFDの混合膜は,加熱溶融状態からの徐冷では消色するが,急冷では発色した固体膜となった.これを昇温すると溶融発色温度より約20℃ 低い温度で消色した.アルキル鎖が長いほど発色は安定で,消色温度は高くなり消色性も向上した.一方,P10,P12では急冷しても安定な発色膜は得られず,またP4はタール状の発色膜となるが,昇温しても消色しなかった.X線回折と示差走査熱量測定(DSC)の結果から,Pn/FDの発色固体膜は,アルキル鎖が長いほど密に凝集したラメラ構造を形成しており,昇温によりこの構造が崩れるとホスホン酸が単独の結晶を形成して分離し,消色することがわかった.これらの結果から,長鎖アルキル基の凝集力は,両者が共同した“超分子構造”の形成による発色の安定化と,ホスホン酸の結晶化による消色の両方に有効に作用し,サーモクロミズム特性を与えることが明らかになった.

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