日本化学会誌(化学と工業化学)
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動的光散乱法を用いたオボトランスフェリンのランタノイドイオンの結合にともなう形態変化
佐々木 範之本田 恒矢島 博文百海 浩行市村 薫佐竹 一夫遠藤 隆一
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1990 年 1990 巻 2 号 p. 185-191

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抄録

ニワトリ卵白由来のオボトランスフェリン(OTf)はt分子のアミノ末端側(N),カルポキシル末端側(C)にそれぞれ金属結合部位を一つずつもつ。これら金属結合サイトの金属錯体の性質として,-連のランタノイド(Ln(III))イオンを用いた研究によって,結合する金属のイオン半侵に錯体の安定性が大きく依存し,イオン半径の減少により錯体の安定性が増加することが示され,しかもLn(III)イオンはN結合サイトよりもC結合サイトに結合しやすいことも山村らにより示された。本研究ではOTfがLn(III)イオンの結合にともなう分子の形態変化を,拡散係数を指標にして,系統的に比較検討した。一連のOTf・Ln(III)錯体の拡散係数の変化は原子番号の増加とともに増加し,その傾向は,Ln(III)のイオン半径の減少によい相関関係を示した。分子の形態変化(おそらく収縮)は,Ln(III)のイオン半径の減少に依存することが示唆された.OTf・Ln(III)錯体の安定性は,Ln(III)イオンの結合にともなうOTf.Ln(III)錯体の分子の形態変化と関係があることが推測される,また,OTfに対しピゆ もて金属イオンを徐々に添加していった時の拡散係数の変化は,実験を行ったすぺてのLn(III)錯体で,金属イオンの添加量そのものよりも,金属添加時に生成したC結合サイト錯体量に,より密接に関係した挙動を示した。また,Ln(III)`結合にともなう拡散係数の変化をより明確にするために,N結合サイトに比較的結合しやすいCu(III)イオンを用いて,それを比較したところ,拡散係数の変化は,C結合サイト金属錯体の生成量とよい相関関係が認められた.このことから,金属イオンの結合にともなう形ぱ態変化が,N結合サイトよりC結合サイトの方がより大きいと示唆された。

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