日本化学会誌(化学と工業化学)
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ルテニウム触媒~水系におけるベンゼンの部分水素化反応機構
福岡 陽平河野 正志永原 肇小野 満司
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1990 年 1990 巻 11 号 p. 1223-1229

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抄録

ベンゼンの液相部分水素化反応機構の解析を行った。反応はRu触媒,助触媒(酸化亜鉛) ,および水の存在下,ベンゼン-d6を用いて行い,生成物中の重水素量を詳細に比較した。触媒上では吸着基質であるオレフィソと,気相水素もしくは水から供給される解離吸着水素との間にC-D~H交換反応が発生している。この交換反応は助触媒を添加した場合のシクロヘキセンの生成過程で特に顕著であった。また,触媒上でシク導ヘキサンが生成する過程は複雑で1単鮪な水素導入過程とは別に,シク糠ヘキセンから脱離した水素により生成した解離吸着水素による水素化の過程が存在することが明らかとなった。反応の選択性は助触媒の添加により大きく向上した。これは助触媒である亜鉛化合物が,触媒上での水素化中間体を安定化してシクロヘキサンへの水素化を抑制し,シクロヘキセンとして脱離する確率を高めること,およびシクロヘキセソの再吸着を阻害することによると推定された。

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