日本化学会誌(化学と工業化学)
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チオリグニンの水素化分解生成物の組成
杉本 義一山田谷 正子小山 実金澤 健治丹羽 吉夫石川 啓一郎三木 康朗大場 昌明
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1988 年 1988 巻 2 号 p. 181-188

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抄録

溶融シリカキャピラリーカラムを備えたガスクロマトグラフィー(GC),ガスクロマトグラフィー質量分析計(GC/MS)およびFI質量分析法(FI-MS)を用い,チオリグニンの水素化分解生成物中の留出成分の組成について検討した。
テトラリン溶媒中,450℃でチオリグニンの水素化分解を行ない,得られた軽質留分(~280℃)および中質留分(280~400℃)を,アルカリ抽出および活性アルミナカラムにより,それぞれ酸性成分,中性極性成分および無極性成分に分離した
。軽質留分中の酸性成分については,溶融シリカキャピラリーカラムを備えたGC,GC/MSにより詳細な分析が可能であること,その結果,単環フェノール類(約85%)が大部分であるが,ほかにインダノ一ル/テトラリノール類,ナフトール類などの二環の化合物(約9%)も含まれていることを示した。
中質留分の各成分については,FI-MSを用いた分子イオンスペクトル法により組成分析を行なった。酸性成分中にはヒドロキシル基を2個もつ化合物が多く含まれており,これらは単環フェノール類の二量体および単環フェノール類とインダノール/テトラリノール類がつながったものと推察された。各成分の骨格構造としてビフェニルタイプと縮合環タイプが考えられるが,無極性成分の脱水素化物のGC/質量分析によりフェナントレン,アントラセン,ピレンなどの縮合多環芳香族化合物が多く検出されており,酸性成分や中性極性成分中にも二および三環の縮合環構造が存在するものと推察された。

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