日本化学会誌(化学と工業化学)
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マイクロ波放電によリ発生させた水素原子による合成高分子化合物の分解反応
進藤 隆世志大嶋 洋三大沼 浩山田 宗慶天野 杲
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1988 年 1988 巻 2 号 p. 174-180

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抄録

石炭の流体化の化学的基礎を得るために,構造既知で熱分解挙動が知られている4種類の合成高分子化合物,すなわちPolystyrene(PST),Poly(methylmetacrylate)(PMMA),Poly[oxy(2,6-dimethyl-1,4-phenylene)](PPO)およびPoly(thio-1,4-phenylene)(PPS)を選び,これらと水素原子との反応を放電流通式反応装置により圧力133Pa,室温から300℃ の温度範囲で行なった。
いずれの合成高分子化合物でも転化率は熱分解より水素原子との反応において大きく,高温ほど顕著であった。熱分解による生成物が単量体から三量体程度のオリゴマーであったのに対し,水素原子との反応による生成物はこれらに加えて単量体の水素化物,水素化分解物からなっていた。低温では水素化物が,高温では水素化分解物が主要な成分であった。さらに合成高分子のくり返し構造は水素原子を照射しても変化しなかった。これらのことから水素原子は高分子鎖中の水素をランダムに引き抜いたり,あるいは硫黄などのヘテロ原子へ選択的に付加しラジカルを生成することによって,高分子のラジカル解重合やランダム分解を促進していると推定される。

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