日本化学会誌(化学と工業化学)
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塩化アンチモン(V)または臭素をドープしたポリ(1, 4-ジチアナフタレン)およびポリフェニレンスルフィドの伝導性と磁性
菅野 忠高橋 正木下 實
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1986 年 1986 巻 3 号 p. 319-326

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抄録

硫黄原子を介して芳香族炭化水素を連結したはしご形高分子ポリ(1, 4-ジチアナフタレン), (略記号PDTN)および単条高分子ポリフェニレンスルフィド(ポリ(チオ-1, 4-フェニレン), (略記号PPS)を合成し塩化アンチモン(V)または臭素を電子受容体として2~4at%ドープすることにより, 7×10-6~1×10-3S/cmに電気伝導度が上昇することを見いだした。PDTN, PPSともに, ドーピングによって不対電子が生じ, 電子スピン共鳴スペクトルは線幅2.5~3G, gテンソルの主値2.0134~2.0139, 2.0065~2.0074, 2.0025~2.0031, 平均値g=2.0076~2・0081で特徴づけられる吸収線を示した。gテンソルの値から, これらの高分子中に存在する不対電子は連結硫黄原子と芳香環上炭素原子の間に非局在化していると推論した。磁化率測定によって見積った不対電子数はドーパント数の十分の一以下しか存在せず, 比較的高い電気伝導性は, イオンラジカル状態(ポーラロン)が2個結合することによって不対電子をもたない荷電状態(ビボーラロン)を形成することによって生じると推論した。

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