日本化学会誌(化学と工業化学)
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可視吸収スペクトルによる分散型アゾ染料とポリエステルモデルの相互作用の検討
御園生 堯久阿部 芳首長尾 幸徳谷田部 佳見
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1980 年 1980 巻 4 号 p. 593-599

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抄録

分散型アゾ染料がテリレンのような疎水性エステル繊維を染色する場合の染色機構に関する基礎的知見を得る目的で,分散型アゾ染料として14種類,疎水性エステル繊維として3種類のポリエステルモデルを選び,可視吸収スペクトル(溶媒; 四塩化炭素)により,染料・繊維間の相互作用を検討した。ポリエステルモデルの濃度変化にともなう染料スペクトルの最大吸収波長の変化に基づくエネルギーの値ΔEを,染料・繊維モデル間の相互作用の尺度とした。ΔEは,染料の極性の増大にともなって増加し,2-シアノエチル基,2-ヒドロキシエチル基をもたない染料の双極子モーメントの二乗とΔEとの間に比例関係が成立した。また,Eλmax(染料の可視吸収帯の最大吸収波長に基づく遷移エネルギー)と絶対温度の逆数との間にも比例関係が成立した。この結果から,分散型アゾ染料とポリエステルモデルの相互作用には,極性van der Waals力の寄与があり,ヒドロキシル基を有する染料にはΔEのずれと大きな温度効果を示すことから,水素結合の寄与があることが推定された。

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