無機硫黄化合物とp-ペンゾキノン類との反応では,溶液のpHの違いにより付加反応または酸化還元反応が生じる。著者らは,低原子価硫黄化合物-チオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3),亜ジチオン酸ナトリウム(Na2S2O4),二亜硫酸ナトリウム(Na2S205)およびジチナン酸ナトリウム(Na2S206)-とp-ベンゾキノンの反応系を用い,酸化還元反応と付加反応の分岐に関与する要因について検討した。亜硫酸に被還元型と被酸化型の互変異性体が存在するように,亜ジチオン酸にも類似の互変異性体が存在する。被還元型が存在するpH域と付加反応が進行するpH域が一致し,また,被酸化型が存在するpH域と酸化還元反応が進行するpH域が一致した。pH域が一致することから,被酸化型の異性体が酸化還元反応に関与し,被還元型の異性体が付加反応に関与するものと考察した。ジチオン酸ナトリウムとp-ベンゾキノンとの反応は,まったく認められなかった。
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