日本化学会誌(化学と工業化学)
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トランスピレーション法による含水塩結晶水の脱水反応の平衡水蒸気圧
清水 商二谷口 雅男
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1977 年 1977 巻 7 号 p. 953-958

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抄録

熱分析実験の空試験などにしばしば用いられる塩を含む9種の含水塩の脱水反応の平衡水蒸気圧を,トランスピレーシン法により,脱水側(正反応)からと水和側(逆反応)からの両方向から測定した。対象とした含水塩の系,温度範囲,水蒸気圧の温度依存性を示す関係式はつぎのようである。
( 1 ) CaC2CO4.1 H20-0 H20 log P (atm)=7.01-3. 62x 10a/T(K) (402-434K)
( 2 ) ZnC2C04. 2 H20-0 H20 log P (atm)=8.74-3. 82 x 10/VT(K) (368-400K)
( 3 ) BaCl2 H20-1 H20 log P (atm)=8.81-3. 32 x 108/T(K) (319-352K)
( 4 ) BaCl2.1 H20-0 H20 log P (atm)=9.30-3. 92x 103/T(K) (355-391K)
( 5 ) Fe012.4 H20-2 H20 log P (atm)=7. 38-2. 83x 103/T(K) (306--338K)
( 6 ) FeCl2 H20-1 H20 log P (atm)=6. 78-3. 06x 108/T( K) (359-386K)
( 7 ) CuCl2.2 1120-0 H20 log P (atm)=8.00-3. 23x 108/T(K) (342-.-'370K)
( 8 ) CaSO4.1/2 H20-0 H20 log P (atm)=6.80-3. 22x 103/T(K) (364-395K)
( 9 ) CuSO4.1. H20-0 H20 log P (atm)=12.3-6. 47x 108/T(K) (447-490K)
さらに上記の蒸気圧式に基づいて,9種の脱水反応の標準自由エネルギー変化(1molの水蒸気を放出する反応あたり)の温度の-次関数式をそれぞれ求めた。反応(9)のCuSOe,HaO系(異常値AH=29.6kca1/m。1)を除き,無水塩生成反応のエンタルピー変化の平均は16.3kcal,低次の含水塩までの脱水反応についての平均は14.1kcalmolであった。脱水反応のエントロピー変化はdse=33e.u.と4S=41e.u.の2種類の反応グループに大別された。各塩に対する既知のaHによる熱化学計算値と脱水反応のエンタルピー変化の実測値とを比較検討した。また仮想的な脱水過程に基づいた熱化学計算によると,CuSO,,H,O系を除き無水塩またはそれに近い塩と1molの結晶水との仮想的な結合エネルギーは,平均約5kcal/molと見積られた。

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