日本化学会誌(化学と工業化学)
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寒天ゲルのレオロジー的性質 ―オゴノリおよびマクサ水溶液ゲルのレオロジー的性質に与えるアルカリ前処理濃度の影響―
渡瀬 峰男赤羽 徹荒川 泓
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1975 年 1975 巻 9 号 p. 1564-1571

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抄録

チリ産およびアルゼンチン産クピレオゴノリ粘質物(Gプαo伽プ毎61081θ漉HARVEY1972年産;以下チリ産をCg。b.,アルゼンチン産をA帥。と略記する)と伊豆産マクサ粘質物(G読4伽〃3α伽η躍,1973年産;以下Igと略記する)をアルカリ前処理としてNaOHO~10%の濃度範囲で処理し抽出分離iした各試料として,1.5,2.0および3。Owt%の試料ゲルをつくり鎖式応力緩和計を用いて応力緩和実験を行なった。各試料ゲルについて,25~55℃の温度範囲でもって4時間までの応力緩和曲線を求め,解析を行なった。
C帥.の場合,前処理過程でアルカリ処理をしない場合は(以後「アルカリ無処理」と書く)ゲル化は見られなかった。しかしアルカリ前処理濃度NaOH2~4%の範囲では強力なゲルをつくり,NaOH濃度とともにゲルの主要三次元構造に対応するとみられる弾性率盈は急激に増大するが,NaOH濃度が4%以上になると増大する傾向は緩慢になる。A帥.の場合,アルカリ無処理でも強力なゲルをつくりNaOH4%までE霊は増大する。しかしNaOH4%以上になるとE笈は徐々に減少する傾向を示した。19.a.の場合はA帥.の場合に類似する。最長緩和時間τ1のアルカリ前処理濃度に対する変化は,上記のE,の場合と類似する。また,τ,の温度依存性から求めた活性化エネルギーはすべての試料ゲルともほぼ5kcal/molの-定値を示す。アルカリ前処理濃度の増加とともに試料中の硫酸基は,とくに1,4結合のC6位の位置の硫酸基が繊維軸に対してアキシアルに配位しているので脱エステル化されて3,6-アンヒドロガラクトースを生成する。試料中の3,6-アンヒドロガラクトース含量が約28%以上になるとE薫は急激に増大する。
以上の結果,アルカリ前処理濃度の増加とともにE,が増大する要因は,試料中の硫酸基含量に関係するのではなく,寒天分子中の硫酸基が寒天分子の立体配座を安定化する位置に配位し,溶媒である水の寄与を通じて説明される。

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