日本化学会誌(化学と工業化学)
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セルロース繊維の非晶域における(101)プレーンラティス構造
林 治助升田 重嘉渡辺 貞良
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1974 年 1974 巻 5 号 p. 948-954

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抄録

セルロース繊維を濃厚AcOK水溶液で処理し,付着AcOKを洗浄除去後80℃で乾燥するとセルロースの(010)に相当する位置に新しい子午線干渉。が出現する。乾燥温度を高くするにしたがいIoは9.5Aの面間隔をもつ一次層線干渉Iiへ次第に変わっていく。これらの干渉は完全なセルロースの干渉のほかに付加的に出現するもので,処理によってセルロースの結晶化度はまったく変わっていない。したがって新干渉は非晶領域に生じたセルロースAcOK付加物によるものと考えられる。カリウムセルPtを酢酸で洗浄することにより,より完全なセルロース-AcOK付加物のX線図を得た。これから付加物の単位胞を求め,11は(110)に指数付けされた。非晶域に生成した付加物は事実上Ii干渉のみを与えるが,この現象は(200)の面内における規則性を保持したままその面間隔に乱れを与えたプレーンラティス構造において起こることを構造因子の計算および二次元モデルによる光回折によって確かめた。この面はセルロースの(101)に相当するがこの面の特挫から考えこの現象はセルロース繊維中の非晶域が元来(101)プレーンラティス構造であることに起因するものと考えた。

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