日本化学会誌(化学と工業化学)
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ポリ塩化ビニルマトリックス中おけるベンゾスピラン化合物の電子線衝撃による発色反応
大野 信
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1973 年 1973 巻 9 号 p. 1644-1650

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抄録

ポリ塩化ビニルマトリヅクス中に分散したスピラン(A)を工5kVの加速電圧をもつ電子ビームで衝撃すると,他のポリ,Ptの場合と異なってただ1種の黄色で可逆性のない生成物(X)が形成された これは光反応生成物(B)とは見かけ上異なるが関連したものであって,マリックスから遊離する成分に影響された生成物と考えられる。
(X)の形成反応は一次反応過程にしたがい,試料中にあらかじめ(B)を形成したのちにビーム衝撃すると(B)が急激に減少し,同時に(X)生成の反応速度が(B)を形成しない場合に対して最大200倍程度速くなった。PVCからはビーム衝撃によって塩素系物質と考えられるかなりの遊離物が発生する。そして(X)は四塩化炭素中における(A)からの光反応生成物ときわめてよく似た特性を示した。これは(A)の開環分子と遊離の塩素化合物との間の塩型生成物と考えられており,PVC中でもビーム衝撃の結果同様な反応が進むことを示唆していると考えられる。そして(X)生成における-もりら次反応過程は,遊離塩素化物と(A)の開環分子の反応において前者の濃度が高いために生じだ擬似的なものであろうと考えられた。

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