消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
臨床研究
早期胃癌に対する内視鏡的粘膜切除術の治療成績
山尾 剛一白尾 国昭山口 肇近藤 仁横田 敏弘斉藤 大三小黒 八七郎吉田 茂昭中西 幸浩落合 淳志
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1995 年 46 巻 p. 69-73

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抄録

 1987年10月から1994年11月の期間に施行したEMRのうち,①大きさ30mm以下,②単発性分化型腺癌,③肉眼型 : Ⅰ型,Ⅱa型,Ⅱc型,腺腫内癌,④ひだ集中を認めないの条件を満たす病変(154例)を,一括切除を行っていた1987年10月から1992年6月までの前期(68例)と,分割切除を導入した1992年7月以降の後期(86例)に分けて,治療成績を水平切除断端陰性率,治癒切除率および局所再発の観点で検討した。水平断端癌陰性率は病変全体で前期で57%,後期では71%であった。占拠部位別ではM領域で前期61%,後期78%,A領域で前期50%,後期79%で,分割切除導入により成績が向上した。C領域では前期45%,後期33%で,ともに水平断端癌陰性率が低い傾向にあった。壁在性別では,後期においていずれの領域でも成績の向上が認められたが,小彎においてその傾向が強かった。治癒切除率は前期49%,後期58%であった。水平断端癌陰性のm癌と判定した症例における局所再発を,一括切除(51例)と分割切除(32例)に分けて検討したところ,両者ともに再発は認められなかった。これらの結果より,分割切除における治療成績の向上が示唆され,分割切除を用いた病変の大きさにおける適応拡大の可能性も示唆された。

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© 1995 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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