2019 年 37 巻 1 号 p. 66-72
本研究では,大規模稲作経営の事例分析を通して農業法人における雇用人材の就業意識の実態をワークコミットメントの概念に着目して検討した.
その結果,従業員のワークコミットメントは,①農業に対するコミットメントがかなり高いこと,②組織コミットメントでは,功利的コミットメント,規範的コミットメントが低かったが,これは若い従業員が多く,勤続年数が短い調査事例の特徴を反映したものであること,③情緒的コミットメントでは,経営体間の差異が顕著であり,経営者の行動や管理施策に積極的に取り組むA法人で高いこと,④組織コミットメントが向上した要因として,「経営者からの評価・期待」,「経営理念・方針への共感」を指摘する従業員の割合が高いことなどが明らかとなった.
以上の結果を踏まえると,農業法人における従業員の組織コミットメント向上には,経営者の行動および管理施策への取り組みが重要と考えられた.