乾燥地に耐えるとされるユーカリは,淡路島の温暖夏季少雨気候に適した樹木と考えられるが,外来植物であるユーカリがどのような菌類と共生するかについては,ほとんど研究されていなかった(折原ら2006,Iwase. et al 2006,大藪ら2007).
本研究では,日本国内に植栽されたユーカリ樹木の生理活性の季節変化とユーカリ樹木から生じる大型菌類の発生消長の対応関係を明らかにするため,三重県亀山市ならびに兵庫県南あわじ市において外生菌根相とその発生消長を調査するとともに,ユーカリ樹木のSPAD値と光-光合成曲線の季節変化を測定した。
その結果,Mycena sp.,Scleroderma cepa,Coprinus patouillardi,Agaricus praeclaresquamosus,S. cepa,Leucocoprinus subglobisporus など12種類の菌類相が確認され,そのうち外生菌根性の子実体は,亀山市で4種,南あわじ市で2種であった。外生菌根性の子実体は,5月から12月までの8月と11月を除いた期間に発生し,樹木のSPAD値あるいは気温の上昇によって発生が誘導され,気温の低下により収束が引き起こることが示唆された。
子実体の発生は,2006年5月から2007年12月までの調査において,8月と11月を除いた月に認められた.種数が最も多く認められたのは,6月の調査時であった.また,子実体発生数が多く認められたのは9月であり,S. cepaが最も多く発生した.最大光合成速度との関係では,子実体発生数の多かった7月に10.6μmol・CO2・m-2・s-1と最も高く,10月には7.2μmol・CO2・m-2・s-1に低下し,子実体発生の見られなかった1月には4.6μmol・CO2・m-2・s-1まで漸減した後,4月には5.8μmol・CO2・m-2・s-1まで上昇した。この結果は,外気温の低下に伴う光合成反応における炭酸固定系の不活性が原因と推測された。