日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会第51回大会
セッションID: D16
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第2会場
日本の砂浜海岸3ヶ所における大型菌類の子実体発生とその季節変化
*糟谷 大河竹橋 誠司浅井 郁夫柿嶌 眞
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抄録

砂浜海岸の生物の多くは養分の保持能力が乏しい砂地に生息し,塩害や飛砂等の環境ストレスに常にさらされているため,これらに適応するための独特の形態的・生態的機構を発達させたと考えられている.しかし,砂浜海岸に分布する大型菌類については研究例が少なく,どのような菌類が生息し,どのような機能を有しているのか未だ不明である.演者らは,砂浜海岸における大型菌類の分布とその生態に関する基礎的情報を得る目的で,日本の砂浜海岸3ヶ所において,子実体(きのこ)発生を調査し,その菌類相と季節変化を明らかにした.調査は,気候条件と植生の異なる3ヶ所,北海道石狩市の石狩浜,千葉県山武市の蓮沼海浜公園南浜,静岡県御前崎市の浜岡砂丘に,汀線を起点として内陸の海浜植生分布の限界まで,汀線と垂直に幅10mの帯状調査区を設置し,2006年3-12月にかけて,毎月1-2回の頻度で実施した.調査区内を2×2mの方形区に区画し,観察されたすべての子実体の発生位置と数を記録した.その結果,3ヶ所の調査区から,日本新産種5種(Marasmiellus mesosporus, Tulostoma adhaerens, T. kotlabae, Geastrum kotlabae, Phallus rubicundus)を含む,担子菌類22種,子嚢菌類1種の計23種のきのこ類が採集された.これらの子実体の発生には,いくつかのパターンがあることが明らかとなった.担子菌のうち,腹菌型菌は春~秋に断続的または継続的に発生する種が多かった.一方,ハラタケ型菌は夏~秋,特に夏に,断続的または散発的に発生する種が多く,春には発生が見られなかった.ハラタケ型菌の子実体発生時期は,腹菌型菌のそれよりも明瞭な季節性が認められ,両者の発生季節は異なることが示された.なお,子実体発生の盛期は3ヶ所とも夏で,ほぼ同時期であった.

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© 2007 日本菌学会
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