日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会第51回大会
セッションID: A1
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第1会場
屋久島において採集されたPiricauda類似菌について
*米澤 洋朗田中 和明細矢 剛
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抄録

屋久島産菌類の採集調査においてPiricauda cochinensis (木本植物枯枝上), Megacapitula villosa (ガジュマル枯樹皮上), Bioconiosporium sp. (メダケ類枯稈上)の不完全菌類が得られた.これら3菌は共に分生子柄が短く不明瞭,分生子が暗褐色~黒色で大型,数本の付属糸を持つという点で類似する.各属は分生子形成様式,分生子の隔壁や大きさ,付属糸の形態などにより区別されているが,いずれも採集例が少ないため限られた形態的情報しか得られておらず,分類学的な境界線は必ずしも明瞭ではない.さらに,これらの菌はテレオモルフが見つかっておらず,分子系統に関するデータも得られていない.よって,これらの菌の生物学的位置を明らかにし,分類基準について検討するため形態的観察とリボソーム18SDNA領域を用いた分子系統解析を行った.その結果,3菌はそれぞれ別属とすることが妥当であり,いずれもPleospora目に所属することが示唆された.
なお,Bioconiosporium sp. は分生子が細胞状の付属糸を多数持つことからPiricauda属に類似するが,形成様式がポロ型ではないという点と付属糸が無隔壁である点でPiricauda属とは異なっておりBioconiosporium属として扱うのが適切とみられた.Bioconiosporium属既知の2種と本菌を比べたところ分生子の大きさや多数の付属糸を有する点でメギ属植物葉上より報告されているB. berberidis と類似していた.しかしながら,B. berberidis が最大で長さ50μmの付属糸を頂部のみに形成するのに対し,本菌は約4-8μmの短い付属糸を頂部および側部に形成する点で異なっていた.これらの比較結果より本菌をBioconiosporium属の新種として検討中である.

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© 2007 日本菌学会
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