日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会50周年記念大会
セッションID: 31-A
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一般発表(ポスター)
日本新産Lindtneria属菌について
*前川 二太郎牛島 秀爾須原 弘登
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抄録

Lindtneria属はPilátにより1938年に創設され、Poria trachyspora Bourdot & Galzinを基準種とする。本属は子実体表面が迷路状、網目状、孔状または針状の背着性子実体を形成する。担子器はコットンブルー染色性の顆粒状物質に富み、担子胞子は卵形から球形で、表面に鶏冠状突起等の装飾をもつ。このような担子胞子の形態的特徴等に基づき、本属は腹菌類のStephanospora属(Stephanosporaceae)との系統的類縁性が示唆されている。現在までにLindtneria属菌として13種報告されているが、わが国からの本属菌の報告はない。演者らは2005年に行った小笠原諸島の調査においてL. thujatsuginaおよびL. trachysporaを採集したので、日本産標本に基づく両種の特徴について報告する。
Lindtneria thujatsugina M. Larsen
子実体表面は迷路状から網目状、暗オリーブ褐色を呈する。担子胞子は6.5-9 x 6.5-7.5 μm(装飾部を除く)、球形で、表面に多くの鶏冠状の突起をもち、さらに赤道周囲に翼状装飾を、また嘴状突起周囲に花冠状装飾をもつ。本種の基準標本は1986年にアメリカのコロラド州において針葉樹腐朽材から採取された子実体であるが、その後の分布に関する報告はない。従って、母島(桑ノ木山、広葉樹腐朽材上)における分布は、基準産地以外での最初の報告である。
Lindtneria trachyspora (Bourdot & Galzin) Pilát
子実体表面は歯牙状から網目状、生時淡黄色から黄色を呈する。担子胞子は6-8 x 5-7 μm(装飾部を除く)、球形で、表面に鶏冠状の突起を多数形成し、嘴状突起周囲に花冠状装飾をもつ。日本産標本は父島(時雨山、広葉樹枯枝上)において採集された。本種は従来アフリカ、ヨーロッパ、北アメリカおよび中央アメリカから報告されているが、アジアからの報告は本報が最初である。

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© 2006 日本菌学会
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