日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会50周年記念大会
セッションID: 3-C
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一般発表(ポスター)
ラビリンチュラ綱ヤブレツボカビ科Schizochytrium 属における系統と化学分類学的形質の比較解析
*横山 林香Kon Wui LiewSalleh Baharuddin本多 大輔
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抄録

クロミスタ界ラビリンチュラ綱ヤブレツボカビ科の生物は,分布の広さと現存量の大きさから海洋における重要な分解者であり,また高度不飽和脂肪酸を蓄積することなどから工業的応用面においても注目されてきている。その中でもSchizochytrium属はその対象として重要視される分類群である。しかし,18S rDNAの分子系統解析の結果は,この属が複数の系統群から構成されていることを示唆し、さらにそれぞれの系統群を区別できる形質は見あたらなかったため,この系統関係の真偽の確認および分類学的再検討が待たれていた。そこで本研究では,新たにヤブレツボカビ類を分離し、この属の分類形質である、栄養細胞の2分裂での増殖を連続観察から確認し、これに当てはまる株について網羅的に18S rDNA 配列の分子系統解析を行った結果、これらの株は3つの系統群を形成した。さらに、これらの3系統群から複数の株を選択し,色素組成と脂肪酸組成を比較した。タイプ種であるS. aggregatumが含まれる系統群は、β-カロテンを高度に蓄積し、高度不飽和脂肪酸の中ではアラキドン酸の比率が高いという特徴をもつ。S. limacinumを含む2つ目の系統群は,β-カロテンに加えてキサントフィル類のカンサキサンチンやアスタキサンチンを蓄積し,ドコサヘキサエン酸を高度に蓄積することで特徴づけられる。さらにS. minutum を含む3つ目の系統群は、カンサキサンチンのみを蓄積し,ラビリンチュラ綱では特異的な高度不飽和脂肪酸であるn-3ドコサペンタエン酸を蓄積する。また,18S rDNAの特異的な挿入配列の有無によっても区別することができる。以上の分子系統関係と化学分類学的形質の一致は,これらの系統群が自然群であることを示唆していると思われる。

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© 2006 日本菌学会
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