The Japanese Journal of Antibiotics
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ErythromycinのO-メチル化誘導体の肺への移行性に関する構造相関
吉田 英生古田 隆久
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2000 年 53 巻 10 号 p. 615-620

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抄録

Erythromycin (EM) の6位水酸基をO-メチル基に置換したclarithromycin (CAM) は肺に対する高い親和性を示す。本研究においては, EMの化学構造中の4箇所の水酸基のメチル化誘導体を用いて, 肺への移行性の構造相関を検討した。
各種O-メチルEM誘導体をラットの外頸静脈内投与後の肺組織中濃度と解離定数 (PKa) との間に相関は認められなかった。一方, 脂溶性との問には相関が認められ, 水酸基がメチル化される毎に脂溶性が増加するのに伴って, 肺への移行性も増加した。しかし, その上昇の程度は各置換位置で大きく異なり, 6位及び12位を置換した場合は, 11位及び4″位の場合に比べて肺への移行性が著しく上昇した。
遊離肺細胞への [14C] EMの取り込みに対して各EM誘導体の阻害効果は認められなかった。 [14C] CAMの取り込みは6位にO-メチル基が導入された誘導体の全てにおいて阻害が認められたが, 11位のO-メチル誘導体及び6位のO-アセチル誘導体では阻害効果がなかった。既報4) において, CAMの肺細胞への移行にはエネルギー依存性の輸送系が存在することが明らかとなっている。今回の結果から, CAMの肺細胞への移行に関与する能動輸送系は6位O-メチル基を認識しているものと考えられた。また, 6位0-メチル化に加え, 12位がO-メチル化された誘導体を添加した場合, CAMの能動輸送系への阻害効果が増加した。

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