The Japanese Journal of Antibiotics
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新生児領域におけるCeftriaxoneの基礎的, 臨床的検討
岩井 直一中村 はるひ宮津 光伸片山 道弘種田 陽一
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1988 年 41 巻 3 号 p. 262-275

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抄録

新生児領域におけるCeftriaxone (CTRX) の基礎的, 臨床的検討を行った。
1. 生後0~28日の新生児10例 (在胎週数37~42週, 生下時体重2, 160~3, 6409) にCTRX 20mg/kg (8例) あるいは10mg/kg (2例), 及び生後35日~9ヵ月の乳児9例 (在胎週数 37~43週, 生下時体重2, 800~3, 5609) に20mg/kgを各々One shot静注した際の血清中濃度と尿中排泄について検討した。
20mg/kg投与例の平均血清中濃度は新生児では0.5時間114±14.6μg/ml, 1時間109±12.8μg/ml, 2時間100±12.6μg/ml, 4時間87.9±15.8μg/ml, 6時間72.8±15.3μg/ml, 12時間 50.1±12.3μg/mlであり, 乳児では各々113±20.0μg/ml, 101±14.7μg/ml, 83.6±9.3μg/ml, 70.3±10.7μg/ml, 56.9±8.6μg/ml, 35.7±9.2μg/mlであった。なお, 半減期の平均は前者では10.3±4.5時間, 後者では6.6±1.9時間であった。
又, 新生児の10mg/kg投与例の平均血清中濃度は0.5時間63.8±6.0μg/ml, 1時間57.8± 2.5μg/ml, 2時間53.5±0.7μg/ml, 4時間41.8±7.4μg/ml, 6時間32.4±5.9μg/ml, 12時間20.8±1.1μg/mlであり, 半減期は平均7.2±0.4時間であった。
これらの成績から, 新生児期では, 血清中濃度推移に明らかなDose responseがみられること, 血清中濃度のピーク値 (0.5時間値) が日齢, 在胎週数, 生下時体重等にあまり関係せずに, 乳児や年長児とほぼ同じ値を示すこと, 半減期は日齢と共に急速に短縮し, 生後1週頃には年長児の1.5倍前後, 乳児期早期には年長児とほとんど変らない値をとることが推測された。
尿中排泄については, 新生児4例及び乳児2例だけの検討であったが, 静注後12時間までの尿中回収率の平均は前者では40.8±8.3%, 後者では44.8±12.8%であり, 新生児期においても良好な尿中排泄を示すことがうかがえた。
2. 新生児期の細菌感染症13例 (日齢0~26日) にCTRXを投与し, その際の臨床効果, 細菌学的効果, 副作用について検討した。なお, 1回の投与量は20mg/kg, 1日の投与回数は生後7日までは1~2回, 8日以降では2回を原則とした。
敗血症疑い1例, 急性肺炎5例, 急性気管支炎3例, 急性尿路感染症2例, 肛門周囲膿瘍1例, ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群1例に対する臨床効果は著効9例, 有効3例, やや有効1例であり, 有効率は92.3%であった。又, 原因菌と考えられたStaphylococcus aureus, Staphylococcus epidermidis, Streptococcus agalactiae, Haemophilus influenzae, Klebsiella pneumoniaeの各々1株, 及びEscherichia coli2株に対する細菌学的効果は, S. aureus 1株が減少であった以外は消失と判定され, 除菌率は85.7%であった。副作用のみられた症例はなかつた。臨床検査値異常としては, 好酸球増多, 血小板減少, GOTの上昇が各々1例に認められたが, いずれも再検査では正常化が確認された。
以上の成績から, CTRXは新生児期においても有用性並びに安全性の高い薬剤であると考えられた。

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