1986 年 39 巻 7 号 p. 1889-1911
メルク社で開発されたImipenem (MK-0787) はβ-Lactam系抗生物質であるCarbapenem系薬剤に属するThienamycin1) のN-Formimidoyl誘導体2)で, Fig.1のような構造を有し, グラム陽性からグラム陰性の好気性菌及び嫌気性菌まで優れた抗菌作用があり, β-Lactamaseに対し安定である3, 4)。 しかし体内においては主に腎でDehydropeptidase-Iにより水解不活化される弱点を有していたが, この酵素に対する阻害剤であるCilastatin sodium (MK-0791) はFig.2に示す構造を有し, MK-0787と同じくメルク社が開発した2, 4, 5)。そこでこの両剤における種々の基礎的検討からMK-0787とMK-0791を等量での配合が選択され, 1984年の第32回日本化学療法学会西日本支部総会における新薬シンポジウムで, 基礎面からの成績及び成人での臨床評価が論じられた4)(Figs. 1, 2)。
私たちは小児に対しても本剤すなわちMK-0787/MK-0791の有用性を知る目的で, 小児に投与し, その血漿中濃度, 尿中濃度, 尿中回収率の測定を行うと共に, 種々の細菌感染症に本剤を投与し, 臨床効果, 細菌学的効果, 副作用及び臨床検査値への影響について検討したのでその成績を報告する。