The Japanese Journal of Antibiotics
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CS-1170の髄液中移行に関する実験的研究
小林 裕森川 嘉郎春田 恒和藤原 徹
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1979 年 32 巻 1 号 p. 35-40

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抄録

われわれは, B群β 溶連菌性髄膜炎の1例にCS-1170を使用し, 著効をおさめ得た。しかし, 断片的ではあるが, そこで測定し得た髄液中濃度の成績から, 本剤の髄液中移行は案外乏しい可能性も推測され, 年長児の化膿性髄膜炎に対しては, ふっう起炎菌となることが多い, 菌種に対する最小発育阻止濃度 (MIC) からも, 一般には適当とは考え難いことを報告した1)。
しかし本剤は, β-Lactamaseに安定で, 従来のCephalosporinに対する耐性株にも有効であるという特長をもつている2)。新生児期感染症の起炎菌種では, グラム陰性桿菌 (GNR) が優勢で, なかでもE. coliが重要である3-13)。 しかも経過が速やかで, 起炎菌とその感受性の決定を待つて抗生剤を選択する暇のないことが多い。Ampicillin (ABPC) 耐性E. coliの増加と関連して, われわれがCefazolin (CEZ) について検討を重ねてきた14, 15) のはそのためであるが, Cephalosporin耐性株もすでに出現しはじめ, Cephalexin使用量の増大はその増加を促し, 近い将来, 従来のCephalosporinの価値が低落する可能性が予見される16) ので, 上述の本剤の特長のもつ意義はきわめて大きいといわなければならない。
しかし, 新生児期重症感染症では, 髄膜炎を伴なつていることが多く5-9), しかも症状が乏しいため診断が困難で3-5, 7-9), 常に髄膜炎を警戒しながら治療する必要がある。 したがつて, 髄膜への菌の侵入を阻止し, あるいは起こりかけている髄膜炎をある程度以上抑制できることが, 新生児期において最初に選択する抗生剤の条件である。この意味で, 髄膜炎に用いうるかどうかが, 新生児期における本剤の価値を占う有力な鍵となると考えられるので, 家兎黄色ブドウ球菌性髄膜炎を用いて, 本剤の髄液中移行について, さらに検討を加えた。

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