1996 年 11 巻 1 号 p. 1-6
血中ウイルスの医療従事者に対する曝露の危険性は, 針刺し事故や血液飛沫によるものがもっとも高い. 日本における8施設の調査から針刺し事故の実態を解析し, さらに予防対策としての安全器具の評価について考察を加えた.
集計した920件の職務上の事故において, 看護婦と医師の事例が大部分であり, 器材別では内腔のある注射針が81%を占めている. 注射針の中では翼状針において頻度が高く, ペン式注射器, 真空採血針などと続く. 通常の注射針ではリキャップに伴う事故が圧倒的に多いが, リキャップしない方式では専用廃棄容器にかかわる事故が目立つ.
近年, 安全装置付きの注射器が登場しているが, 装置の評価, 使いやすさ, 使用範囲および価格や廃棄処理に対する検討が必要である.