日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第59回大会・2016例会
セッションID: A4-1
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第59回大会:口頭発表
写真共有アプリ“Pinterest”を使用した授業の可能性と課題
―大学生の授業評価より―
*花輪 由樹
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抄録

【研究背景と目的】近年スマートフォンなどの普及から写真撮影後、それをSNS上で共有するアプリが増えている。代表的なものには「過去の出来事を投稿して、友達に伝える」FacebookやInstagramがあるが、本研究では旅やピクニック、DIYなど「生活においてこれからアクションを起こす際にアイデアを集める」Pinterestに注目し、これを調理実習等の授業にどう生かせるか、またその課題は何かを探った。
【方法】2015年9月~2016年1月に、関西地区のH大学における「ライフマネジメント実習」(90分×2コマ)にて、Pinterestを使用した授業を展開した。受講者は20名(4回生4名、3回生3名、2回生12名、科目履修生1名)おり、そのうち12名が中・高等学校家庭科教諭の免許取得を希望していた。15回の授業のうち昼食実習や、会食実習、エコグッズ製作においてピンタレストを使用した。本稿では期末テストで記載させたPinterestを使用した授業の感想についてみていく。
【結果】期末テストの最後に採点外として、「今回のピンタレストを使用した授業について、①良かったこと、②課題と思うこと」について自由記述をさせた。受験者18名のうち16名の回答があった。 
まず「①良かったこと」に関しては14名の回答があり、その内容を分析していくと、主に「情報共有できること」(6名)、「色々な画像がみれること」(4名)、「授業への関心の深まり」(3名)、「アイデアが得られること」(2名)について記載されていた。まず「情報共有できること」については、リアルタイムの共有がクラスに一体感をもたらすだけでなく、受講者以外の人々のアイデアを知ることもできたり、また個々人が良いと思ったアイデアを周囲に発信できるので、自身の考えの幅を広げることができるという意見がみられた。次に「色々な画像がみれること」については、レシピのリンクに飛ぶことができるので良かったという意見があった。そして「授業への関心の深まり」については、スマートフォンの使用で授業への関心が強まったり、授業に参加しやすくなったり、欠席しても授業を理解できるといった意見がみられた。最後に「アイデアが得られること」については、ピンタレストで探すことでいいアイデアがでてきたという意見や、文字ではなく画像で示されていることでアイデアが出やすかったという意見がみられた。
一方「②課題と思うこと」に関しては14名の回答があり、その内容を分析していくと、主に「使い方の分かりにくさ」(5名)、「個人情報などの問題」(2名)、「授業でのさらなる多用」(2名)、「その他」がみられた。まず「使い方の分かりにくさ」については、興味をもった画像にピンをする方法や共有ボードの招待を受ける方法など基本操作が難しかったという意見がみられた。次に「個人情報などの問題」については誰のピンでも見れてしまうのが情報共有の面では良いことだがプライバシーを守れていないという指摘がみられた。そして「授業でのさらなる多用」は、ピンタレストをさらに多用できたら授業ももっと楽しくなるといった意見がみられた。最後に「その他」では、英語の記事が付随していることが多いので読めないといった指摘や、アプリや画像が重いといったこと、授業時に無駄にスマートフォンを使ってしまうこと、電池がないときや電波に速度制限がかかる時期にはつらいという意見、また今回はいなかったがガラケーを使用している人がいたら授業への参加が難しいといった意見がみられた。
今後は機器をもっていない者には大学側からのタブレットやパソコンの貸し出しを利用するように指示し、電波は大学のWi-Fiの利用を促し、使い方に関しては基本操作の他に、写真の非公開・公開などプライバシー問題も含めてそのマニュアルを紙面で配布する必要があるだろう。

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