日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第51回大会・2008例会
セッションID: P9
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日本家庭科教育学会第51回大会
ポスター発表
中学生の食意識・食行動を改善し、野菜摂取量を増やすための技術・家庭科の題材開発
*河野   公子筒井 恭子近藤   幸子久坂 早苗
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抄録

〈目的〉  本研究は,中学生の時期に望ましい食意識や食行動を形成させることの重要性にかんがみ、技術・家庭科の食生活に関する指導において、特に、日本人全体の課題でもある野菜摂取量不足を解消するための題材開発を行い、その効果を検証することを目的としている。 〈方法〉  小松市立中学校において1年生を対象に,食生活領域の指導前の調査結果(240名)から得られた野菜嫌いの課題を解決するための題材、「1日5皿の野菜料理を食べよう」(7時間)を開発し、指導後の調査を実施(304名)して分析した。分析には、統計解析ソフトSPSS11.5Jを用い、統計的な有意差の検定は,χ²検定を用いた。 〈結果〉 _丸1_食生活の学習内容の中で関心が高いのは、指導前・指導後ともに「調理実習」であり、指導前86.9%から指導後91.1%へと増加した。指導後の「1日5皿の野菜料理を食べよう」への関心は、77.4%と高かった。 _丸2_食意識・食行動については、「毎日3食、必ず食べる」に肯定的な回答が最も多く、指導前75.2%から指導後95.0%へ、「楽しく食べる」は、指導前56.7%から指導後85.3%へ、「平日は同じ時間に食べる」は指導前24.8%から指導後80.2%へと増加しており、生徒の食意識・食行動の改善が認められた。  _丸3_嫌いな食品として、指導前では、野菜類が多く挙げられた(74.8%)が、指導後には、「嫌いな野菜がある」は、56.1%と減少した。野菜が嫌いな理由は、「味」(85.5%)、「食感」(56・9%)が多く、「細かくする」(56.5%)や、「好きな料理に混ぜる」(52.9%)ことで食べられると回答している。指導後の調査では、43.1%の生徒が「嫌いな野菜を食べられるようになった」と回答し、「嫌いな野菜がない」19.7%を加えると、62.8%の生徒が野菜を食べられるようになり、食べられないとする者は、37.1%へと減少した。また、野菜摂取に対する意識では、「野菜は毎日食べるようにしている」に肯定的な回答は、79.2%であり、指導の効果が認められた。  一方、嫌いな野菜に対する行動は、学校給食と自宅で異なり、「食べる」のは、学校給食の78.2%に対し、自宅では61.1%であった。 1週間で平均した1日の野菜摂取量は、「1日3~4皿」が最も多く46.8%であり、23.1%の生徒が「野菜摂取量が増えた」と回答した。 _丸4_男女差については、指導前・指導後ともに「調理実習への関心」、「包丁の使用頻度」は、女子が有意に高く、野菜の切り方や一人でできる調理も女子のほうが有意に高いものが多かった。一方、男子は、嫌いな食品がない者が多く(p<0.05)、嫌いな野菜が「ない」のも男子に多い傾向が認められた。学校・自宅で嫌いな食品(野菜)が出された場合に「食べる」のは、男子のほうが有意に高かった。 _丸5_食意識・食行動と野菜嫌いとの関連をみると、野菜嫌いが多い者は、食事時間が不規則(p<0.05)、主食・主菜・副菜が揃っていない食事(p<0.001)、栄養バランスを考えない(p<0.05)、健康に無関心(p<0.001)、食べる食品が少ない(p<0.01)などが認められた。 _丸6_「1日5皿の野菜料理を食べよう」の実践により、調理への関心、調理技術、食意識・食行動の改善等の学習効果が認められ、本題材の有効性を一部検証することができた。目標とした野菜摂取量の増加は認められなかったが、生徒は、野菜の摂取量を「何皿」という感覚で把握することができるようになり、一歩前進したものと思われる。食習慣形成にかかわる指導は、今後も家庭との連携を図りながら、継続的な指導を続けていきたい。

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© 2008 日本家庭科教育学会
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