日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第51回大会・2008例会
セッションID: B1-2
会議情報

日本家庭科教育学会第51回大会
口頭発表
食生活の自立を促す調理実習の試み
―オリジナルレシピ集を使った自立型実習の実践―
*林田 秩子筒井 佐和子植山 敦子
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抄録

【目的】  2003年度から「家庭総合」4単位、「家庭基礎」2単位が選択できるよう になり、現在福岡県では約8割の高校が「家庭基礎」を選択必履修している。子ども達の食の乱れや調理技術の低下、生活体験の不足などが指摘されるにもかかわらず、「家庭基礎」では食教育の基本となる調理実習の時間を充分に確保できない現状がある。  自分の健康を考えた食生活を送るためには、一汁二菜の基本献立を自分で料理する力、つまり、主体的に献立や調理の段取りを考え、進んで行動する力を持つことは重要である。そこで、調理の基礎的な力を身につけさせ、限られた授業時数の中で効果的に食生活の自立を促す指導法として、[自立型実習]の研究に取り組んだ。 【方法】 1[教師主導型実習]から[自立型実習]へ  これまで調理実習では2品の料理を2時間連続で作り、教師が段階ごとに指示をしながら、実習を引っ張っていく[教師主導型実習]によるグループ実習を行ってきた。しかし、調理実習に関する先行研究やメンバーによるこれまでの実践から、生徒の現状や実習時間が取れないなどの課題を解決するためには、[自立型実習]が効果的であり、生徒の意欲を引き出すことがわかった。そこで、一汁二菜の基本献立を習得させるための[自立型実習]の指導法とそれをサポートする副教材の開発を行った。  各学校によって調理実習の形態は一様ではないが、いずれにしても学校の実習だけでは調理技術や知識を定着させることは難しい。これからの高校の家庭科では、生徒達の将来の食生活をいかにして支援するかを考えることも必要なことである。 2 オリジナルレシピ集「ワンプレートのカフェごはん」の作成と実践  レシピ集は(1)一汁二菜の献立を(2)写真を見ながら段取りよく作ることができ、(3)手順や味付け、盛り付けがシンプルであることを目標にした。そのため一汁二菜という配膳を基本としながら、ワンプレートの盛りつけで片付けも楽にできるように考えたのが「ワンプレートのカフェごはん」である。  筒井は勤務校の2学年5クラス(1クラス40名)でオリジナルレシピ集を使い、2007年度より実習を行っている。実習では50分で、一汁二菜(魚のホイル焼き、肉じゃが、麻婆豆腐、雑煮)の調理と試食、片付けまでを行った。短時間の実習では、生徒一人ひとりのモチベーションアップが実習のでき映えや実習を時間内に終了させることに大きく影響する。そのため事前に、パワーポイントを用いて調理手順を提示したり、レシピ集の写真で実習の到達目標を確認させるなどして、実習に取り組ませた。  短時間の実習であるため、教師側が行う材料準備等の事前準備は入念に行うが、当然、生徒の実習中の活動は慌ただしくなる。しかし、設定された時間内で全てを行うことで、生徒は自信を持ち、調理に対する苦手意識を払拭し、「家でも作ってみよう」という意欲喚起につながっている。 【結果】  実習後の生徒の満足感を調査した結果、オリジナルレシピ集を使うことにより生徒の満足感が高くなる。これは、「おいしかった」という満足感と「自分で作った」という達成感によるものであることがアンケートの記述からも読み取れる。  今回、オリジナルレシピ集を使った[自立型実習]を報告したが、生徒の状況や実習形態などに合わせた様々な[自立型実習]が可能であり、多くの学校で効果的な実践が行われることを期待している。

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© 2008 日本家庭科教育学会
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