日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第48回日本家庭科教育学会大会
セッションID: 31
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第48回大会 口頭発表
金銭教育におけるメディア・リテラシー育成のための基礎的研究
*妹尾 理子青木 幸子伊藤 葉子内野 紀子佐藤 麻子渡辺 彩子
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抄録

研究の背景と目的
近年、子どもをとりまく情報世界では、安易な消費や借金を誘う情報があふれている。また、金融規制緩和と情報通信の技術革新により、主体的に消費生活をつくっていくために必要な健全な金銭観や金融経済の基礎的な知識を扱う新たな「金銭教育」の重要性が高まっているといわれる。さらに、金融や消費者教育関連の諸機関からは教材や冊子の提供等がみられ、その有効性の検討や利用の可能性を探ることでより意味のある教育実践の可能性が考えられる。 そこで、関東地区会金銭教育研究グループでは、家庭科における金銭教育の方向性を考え、カリキュラム開発を行うことを最終目標に、子どもを対象としたメディア・リテラシーに関する基礎的研究に取り組んでいる。これまでに実施したのは、学習指導要領や先行研究の概要把握と、小・中・高等学校の子どもを対象にした質問紙調査である。本報では、子どものCMの受け取り方と、金銭観及び金融に関する意識・知識との関連等を分析し、メディア・リテラシーの形成要因を探ることを主目的としている。
方法
以下の2種類の質問紙調査を同一の生徒に実施した。1)金融関連のテレビCM(銀行、信販、生命保険、消費者金融関連の5種)を視聴させた上でその印象を問う調査 2)「金銭・金融に関する意識・知識」を問う調査調査の概要は以下の通りである。1)実施時期:平成17年2_から_3月 2)対象生徒:小学校5年255名(男113名、女子142名)、中学2年生300名(男子156名、女子144名)、高校2年生218名(男子114名、女子104名)(東京・千葉・群馬の国公立学校在学生)
結果
(1)金融CMに関する質問紙調査の結果、CMによって好感度は異なり、学校段階を比較すると小学生のほうが中学生や高校より好感度が高い傾向がみられた。ただし、CMの内容に関する質問では、3種のCMにおいて、画面に登場している動物や人物への印象のほうが強く、各CMの主目的とされる消費者金融やクレジットカードに関する印象は薄い傾向が見られた。
(2)金融に関する意識や知識についての質問紙調査の結果、貯蓄への意欲や適切な値段での購入への意識は高いことがわかった。一方、株や投資への興味は低く、税金や消費者金融の金利に関する知識は乏しいことが示された。
(3)学校段階の比較においては、質問20項目中半数以上に有意な差がみられ、小学生のほうが中学・高校生にくらべて、支出内容を記録している割合が高かった。一方で、クレジットカードの仕組みや所得税の知識は年齢が高くなるほど多くなることが示され、金融に関する意識や知識の年齢による違いが明らかとなった。

注: 本研究では、「金銭教育」の関連用語として「家庭経済教育」や「金融教育」という言葉の使用も考えたが、健全な金銭観を養い、金融経済の基礎的な理解をすすめるための教育という意味で、「金銭教育」という言葉を用いた。

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© 2005 日本家庭科教育学会
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