日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第48回日本家庭科教育学会大会
セッションID: 26
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第48回大会 口頭発表
特色ある取り組みからみた特別支援教育における家庭科の検討
福田 公子*伊藤 圭子
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抄録


目 的
 2003年に特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議がまとめた『今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)』によると、「障害の程度などに応じ特別の場で指導を行う『特殊教育』から障害のある児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じて適切な教育的支援を行う『特別支援教育』への転換を図る」とあり、2007年度を目標に特別支援教育実施のための作業が進められている。特別支援教育推進のためのモデル事業も全国的に実施され、その成果も報告されている。 家庭科においては、これまでも「障害児学級と通常学級の子どもが共に学ぶ」授業が多く実践されている。しかし、家庭科教師は大きな不安と負担を抱えながら、試行錯誤しながら授業を行っているのが現状である。家庭科教師の自助努力だけでは解決できない問題も内在している。この状況のままで特別支援教育が実施されると、さらに深刻な問題を抱えることになるであろう。特別支援教育における家庭科授業の在り方を構想することは急務の課題である。 そこで、「障害児学級と通常学級の子どもが共に学ぶ」家庭科授業において、特色ある取り組みを行っている実践から、今後の特別支援教育における家庭科への示唆を得ることを目的とする。
方 法
 第1次調査:全国の小・中学校において指導的立場にある家庭科担当教師360名に対して,2003年11月から2004年1月にかけて調査を郵送法によって実施した。有効回収率は71.4%(小学校136名、中学校121名)であった。 第2次調査:第1次調査の回答者のうち、特色ある実践を行っていた学校の家庭科教師を対象にインタビュー調査を実施した。対象校は、小学校3校、中学校3校であり、時期は2004年2月~3月であった。
結果および考察
1.「障害児学級と通常学級の子どもが共に学ぶ」授業の実践経験がある家庭科教師に、理論学習・実習学習別に自由記述で効果的指導方法を問うた結果、理論学習においては「教材や学習課題の提示方法の工夫」(39.4%)、「複数教員やボランティアの支援」(22.2%)、「通常学級の子どもの活用」(19.2%)の順に多く挙げられていた。実習学習においては「通常学級の子どもの活用」(44.1%)、「複数教員での支援」(38.2%)、「教材や学習課題の提示方法の工夫」(22.8%)の順に多く挙げられていた。2.効果的指導方法として特色ある取り組みをしていた学校に訪問しインタビュー調査をした結果、先進的取り組みの中にも幾つかの課題が提起された。例えば、学校全体の取り組みとしてボランティア人材リストを作成し、そのリストに登録された保護者や地域の人が授業を支援する実践がみられた。この学校の教師は、特に実習授業において、支援者が障害児学級からの子どもの指導をすることの有用性について述べていた。しかし、この実践には障害児学級の子どものプライバシーの問題、本授業における評価の問題、支援者の専門性および指導方法の問題など様々な課題が内在していた。その他の学校においては、複数教師での指導体制をとっている学校もみられたが、その実践には教師の多様な子どもを指導できる専門性や体力などの問題、打ち合わせ時間確保の問題、教育委員会や学校長などの支援体制の問題など多くの課題が内在していた。

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© 2005 日本家庭科教育学会
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