日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第47回日本家庭科教育学会大会
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第47回大会ポスター発表
小学校「総合的な学習の時間」で行う染色教材の提案
小松 恵美子森田 みゆき
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p. 37

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抄録

【目的】現行の小学校学習指導要領では,日常着の手入れとして自分で洗濯ができることが求められている。洗濯の目的は被洗物に付いた汚れを落とすことであるが,「布への汚れの付着・脱落」と「布の染色・退色」は物理化学的な現象としては同じである。したがって,洗濯学習に引き続いて染色についても学び,汚れ・色・着色現象・洗浄現象などを総合的に認識することが,中学・高校で学習する洗濯・染色理論の理解につなげるためには重要であり,児童にとっても望ましい。
だがしかし,学習指導要領では「洗剤の働きに深入りしないこと」という記述があるように,家事技術の習得に重きが置かれ,科学的な視点からの学習が軽視されているきらいがある。洗濯に限らず,家事の大部分は物理的・化学的な諸現象の組み合わせで成り立っている。家事技術の根本である自然科学的な現象を理解していなければ,実生活の多様な場面で自ら考え判断して技術を応用し,発展させる力ははぐくまれないと考えられる。文部科学省が総合的な学習の時間のねらいとしているのは,まさにこの力をはぐくむことである。
したがって総合的な学習の時間で,家庭科の学習成果を科学的な視点からさらに発展させる教材が必要と言える。本研究では,洗濯の学習を核に染色の学習まで発展させることを目的として,小学校の総合的な学習の時間の実践教材の検討を行った。
【方法】平成15年12月26日付で文部科学省から出された通知「小学校,中学校,高等学校等の学習指導要領の一部改正等について」では,学習指導要領に示していない内容を加えて指導することができることや,上記の洗剤学習の規制のような「内容の範囲と程度」の事項についても,必要があれば縛られなくとも良い趣旨が述べられている。これを踏まえて,家庭科で着色現象と関連付けてどのように洗浄現象を学習させるか,そのための実験・実習教材を含めて検討した。また,総合的な学習の時間で行う具体的な染色教材は,地域の特色を生かしやすいものに留意して検討を行った。
【結果】検討の結果,家庭科での学習成果を発展させた,総合的な学習の時間の染色実践教材を以下のように提案した。まず家庭科で「衣服の働きと素材・洗濯」で衣服の機能と素材,手入れの必要性と洗濯の目的を学習し,靴下の手洗いを実習教材とした。
体育の授業等で着用し汚れた自分の白い靴下を観察して,色や臭い,汗をかいたかなどから,汚れと洗濯する理由を考えさせる。次に水でもみ洗いをし,水と機械力だけで落ちる汚れを観察させる。ここで,汚れた水を替えなければ洗濯物に汚れ(泥などの有色物)が戻ってしまう現象も観察させ,布への着脱色現象が水を介して生じやすいことに注目させて,染色学習への足がかりをつくっておく。さらに洗剤を加えて洗い,観察して洗剤の働きについて学習する流れとした。また一方で,「手縫い・ミシンによる製作」で雑巾作り(手縫い)とアームカバー作り(ミシン縫い)を学習しておく。
総合的な学習の時間では,現在開発中である土顔料による布の染色教材(1,2)と,植物染めを行った残浴から顔料を生成し回収する教材(3)を取り入れ,水溶性色素と不溶性顔料による染色へと発展させた。作成した染色布の利用は,地域社会への還元も視野に入れて,習得した縫製の技術を使った実生活で利用する物の製作へと発展させた。

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© 2004 日本家庭科教育学会
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