日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第47回日本家庭科教育学会大会
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第47回大会口頭発表
子どもの自尊感情を育む諸要素と家庭科
*大島 真理子荒井 紀子
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p. 25

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抄録

【目的】 近年、いじめや暴力、非行の低年齢化、不登校、学級崩壊などが深刻化し、子どもの行動が社会問題になっている。このような子どもの一連の問題状況の裏側には、「こころ」の一側面であるの低さが関係しているのではないかと考えられる。このような自尊感情の低い子どもたちに対して、自尊感情を育む機会を教育の中で積極的に取り入れる必要がある。そこで本研究では、子どもの生活と自尊感情との関連に関する先行研究を分析し、子どもの自尊感情に影響を与える要因を検討し、子どもの自尊感情を育む要素を明確にする。そして学校教育の中でも特に家庭科における自尊感情の捉え方を整理し、自尊感情を育むための視点を検討する。なお、本研究では『自尊感情』を驍oすると同時に、自分に価値を見出したり、自分自身を尊重する感情闍`した。
【方法】(1)心理学・教育学関連の研究論文の中から1990年以降のをテーマとした先行研究を検索し、子どもの生活と関連する調査論文5点について詳細に検討した。(2)小学校から高等学校までの現行の学習指導要領にがどう記載されているか、自尊感情に関連がある記述を分析した。(3)自尊感情を育む家庭科の学習のあり方を検討するため、1993年から2003年までの月刊誌・・、・逎と関連する学会誌等の中から自尊感情を育む要素が含まれると思われる4つの高等学校家庭科授業実践を選び、これらを、授業の構想(ねらい・構造)、授業実践(内容・生徒の感想)、自尊感情の視点から分析した。
【結果】(1) 子どもの自尊感情を育む諸要素
先行研究より自尊感情を育む諸要素として以下の点が析出された。?子どもの自尊感情は、子ども自身が家庭や学校、地域社会と関係する中で、家族や教師、友人といった他者からの情緒的受容、共感的理解、個別性の受容などを通して形成される。?自らが主体的・能動的に行動を起こすことを通して味わう満足感や役立ち感、達成感、自信は自尊感情を育んでいくことにつながる。?自尊感情は自己概念の下位概念であり、自己を見つめ自己を形成・確立することはより内面的な主体性に結びつき自尊感情を育む。
(2) 現行学習指導要領における自尊感情の捉え方
全体を通してと言う用語自体の記載はみられず、学習指導要領に自尊感情を育む視点が位置づけられているとは言い難い。ここでは自尊感情を育む要素として先行研究から抽出した7項目(主体的・能動的な表現、自己概念の形成、青年期の課題、人間尊重、他者との関係性、個別性の尊重、集団の一員としての自覚)を分析視点として設定した。教科の中で、各項目についての記載がみられたのは、社会科・地理歴史・公民科、生活科、家庭・技術家庭科、体育・保健体育科で、さらに要素ごとに分類すると教科の特徴がみられた。
(3) 家庭科における自尊感情を育む学習
4つの実践(黷轤рWェンダー999n域を結ぶ世代間交流学習001w保育教育』を通して“子どもの権利条約”を学ぶ994黷轤・ゥ立と共生を視点として~001)を分析した結果、それらには子どもの自尊感情を育む上での共通する3つの視点‐mり、自己を見つめ直し、これからの生き方あり方を考えることへつなげている点・他者との関係性を築くことを促す点・蜻I・能動的な活動を学習に取り入れる点]がみられた。子どもたちにとって自尊感情は、学習への意欲に結びつき、課題を達成する上での重要な精神的基盤であると考えられる。また家庭科は、学習目標・内容及び教科の特性から、自尊感情そのものを学習の中で育むことが可能な教科であると考えられる。

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© 2004 日本家庭科教育学会
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