日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
第47回日本家庭科教育学会大会
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第47回大会口頭発表
家庭科における住まいに関する学習の現状と可能性
-大学生の実態と生活者との比較による考察-
*妹尾 理子小林 文香
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p. 23

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抄録

【背景および目的】
近年、住まいを巡っては多くの問題や社会的課題の広がりがみられる。具体的には、シックハウス問題、欠陥住宅問題、環境との共生、高齢者対応、省エネルギー、防犯・防災対策等があげられる。さらに、例えば2000年に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」など、住まいに関する法整備も進み、良質な住まいを入手するためにはひとりひとりの消費者・生活者がその内容を理解し、主体性をもってかかわることが重要になっている。そのためには学習は不可欠である。住まいに関する学習には、学校での学習と教育と成人後の社会における自主的な学習の両方が考えられる。そこで、筆者らは先行研究として、2000年に生活者の住まいに関する意識と学習の実態調査を行った。その結果得られた問題点は、学習経験の少なさであった。特に、小学校をはじめとして、中学校、高等学校の家庭科教育において学習しているはずである家庭科における住まい学習の経験が無い(あるいは記憶に無い)という回答が非常に多かったことは想像以上であり、これまでにもしばしば指摘されてきた家庭科における住分野の学習軽視の実態が裏付けられる結果であった。しかし、現行の家庭科教科書や近年の研究論文をみると、住まい関連学習は量的にも質的にも広がりをもち、家庭科学習において不可欠で重要な学習の一要素となっていると考えられる。そこで、本研究では、最近の住まい学習の実態を探るために、高等学校を卒業して間もない大学生に対し、住まいに対する意識と住学習経験の調査を実施した。そして、調査結果を先の生活者調査の結果と比較し、考察を加えることで、住まい関連学習の今後の可能性と方向性を探ることを目的とする。
【調査の概要】 先行調査は、首都圏の生活者(生活協同組合加入者)を対象に、2002年9~10月に実施した。本調査は、首都圏の2大学の大学生に対し、2003年1月に実施した。調査方法は質問紙法である。 質問内容は、以下の項目である。?現在の住まいについての認識および住まい観 ?学習経験の有無、学習の場、その他の情報源 ?印象に残った学習内容 ?学習の役立ち感 ?今後の住まい学習に対する意欲
【結果及び考察】30代から40代の女性が8割という生協組合員を対象にした調査では、住まいに関する学習経験があるとする回答はごくわずかであったが、大学生に対する調査結果を見ると、大部分の学生が、小・中・高いずれかの段階での住まい関連の学習経験があると回答していた。これは、記憶が新しいという理由と共に、近年、家庭科における住まい学習が、取り組みやすくなったことが考えられる。それは、高等学校家庭科が男女必修になったこと、教科書や資料集の記述内容が充実し、高齢者対応(バリアフリー)等の新たな社会的課題に対する認識が広がり、実践に取り組みやすくなったこと等が考えられる。それは、印象に残った学習内容についての記述からも感じられた。その一方で、学習経験の個人差は大きく、役立ち感もまだ不十分で、今後の学習の方向性等、検討・改善の余地は大きいといえる。環境問題や防災、シックハウス問題の学習等、新たな社会的課題への取り組みも含め、住分野の学習教材や授業づくりを再検討することが今後の課題といえる。

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© 2004 日本家庭科教育学会
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