カウンセリング研究
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原著
心理臨床家のインパクトケースにおける個人的成長 ―臨床的苦痛との関連から―
福島 円
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2016 年 49 巻 3-4 号 p. 129-138

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抄録

近年,心理療法やカウンセリングが心理臨床家自身に与える影響が,否定面と肯定面の両面から論じられてきている。本研究の目的は,心理臨床家が,臨床歴の中で最もインパクトを受けたケースにおいて,クライエントの体験に関わった結果として生じた成長感について,苦痛の感覚との関連から検討することである。対象者は心理臨床家204名である。因子分析によって臨床家の苦痛と成長を表す項目を選定し,「臨床的苦痛尺度」と「個人的成長尺度」を作成し,苦痛と成長の関連について調べた。両者は正の相関を示し,重回帰分析の結果から苦痛が成長を促進し,両者は共に存在し得ること,クライエントとの関わりから受ける衝撃に対処する中で成長がもたらされることが示された。各下位因子の特徴について,個人的成長では,関係性に関する行動の変容は苦痛と正の相関を示した。臨床的苦痛では,疲労感や不安感が成長と正の相関を示し,クライエントへの嫌悪感は有意な相関を示さなかった。属性変数と成長との関連では,終結からの期間は成長を抑制し,クライエントの年齢は成長を抑制した。しかし説明率の低さから,成長に影響を与える主観的な要因を探る必要性が示唆された。

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© 2016 日本カウンセリング学会
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