日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集
第63回日本衛生動物学会大会
セッションID: B08
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第63回日本衛生動物学会大会
日本の新たな恙虫病感染環-日本列島西端地域の宮古列島で発見されたラット属とデリーツツガムシの浸淫-
*高田 伸弘山本 正悟平良 勝也高橋 守藤田 博己
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抄録

沖縄県域の島嶼で恙虫病の原発例は確認されていなかったが、2008年6月に宮古列島で60歳代男の同県確認第1例,また2010年6月に50歳代男の2例目が続いた.臨床所見は本病の特徴を示し,やや重症化傾向もあったがTC系抗生剤で治癒した.大きな問題は,第1例の血液から検出されたOrientia tsutsugamushi(Ot)の遺伝子が台湾系菌型と完全一致したことで,その感染環が注目された.そこで同年10月,翌2009年1月と6月に,推定感染地(本島北部の半島または本島中央部)を含む各地区で動物の検査(ラット属など鼠類,食虫類,イタチ),黒布見取法,土壌採取などを行ったが恙虫類は一切得られず,鼠類で有意な抗Ot抗体も検出されなかった.ところが,第2例目発生直後の7,8月に,推定感染地(本島北部に接する池間島)で調査したところ,野生化して繁殖するラット属(大半がクマネズミ)に唯一種寄生するデリーツツガムシ(デリー)を夥しく見出した.この2例目の血液由来Ot株および同島のラット脾臓由来のOt遺伝子またマウス継代で分離できたOt株はいずれも第1例と同じ台湾系菌型と一致した.なお,デリー自体からはOtを未だ検出できていない.一方,宮古島の属島(伊良部島,来間島および多良間島)のラット属からは恙虫類を見出せていないが,デリーを池間島限定と断定してよいものか,同島での周年調査と共に他の先島諸島でも更なる調査が必要で,台湾との比較も求められよう. 共同研究者:安藤秀二・川端寛樹・高野 愛(国立感染研),角坂照貴(愛知医大),岡野 祥(沖縄県衛研),御供田睦代(鹿児島県保環セ),本田俊郎(鹿児島県大島病院),北野智一(宮崎県衛環研),矢野泰弘・岩崎博道(福井大医),及川陽三郎(金沢医大),平良セツ子(宮古福保),岸本壽男(岡山県環保セ)(2010年厚労科研費によった)

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© 2011 日本衛生動物学会
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