日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集
第61回日本衛生動物学会大会
セッションID: B26
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一般講演
ブユ属ウォレスブユ亜属のミトコンドリア16SリボソームRNA遺伝子による系統解析
*高岡 宏行大塚 靖青木 千春
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抄録

アジアに固有のブユ属3亜属のうち,ウォレスブユ亜属は1983年にフィリピンに分布する8種および与那国産の1種をもとに創設された(Takaoka, 1983).その後2003年にはインドネシアから2種が追加された(Takaoka, 2003).さらに,科学研究費海外調査により 2006-2008年にかけてフィリピンの各地で行った採集により,6新種を得たので,現在は,合計17種が本亜属に含まれる.今回,2種を除く15種について,ミトコンドリア16SリボソームRNA遺伝子の配列を決定し,系統関係を調べた.その結果,15種は2つのグループ(AとB)に大別された(8種がA,7種がB).このうちグループAはさらに2つのグループ(AaとAb)に分けられた(5種がAa, 3種がAb).この3つのグループ別に蛹の呼吸管および雌雄外部生殖器の形態形質において検討を行った結果,蛹の呼吸管の形態では,グループAaとAbに祖先形質がみられ,グループBでは派生形質がみられた.雌の外部生殖器のうち生殖叉(genital fork)の形態では,グループAに祖先形質,グループBでは派生形質,そしてグループAbでは中間の形態がみられた.本亜属にあっては,グループAaからグループAb, そしてグループBへと種の分化が進んできたことが示唆される.また,地理的分布においては,グループAaが本亜属の分布域の中心部から辺縁部に満遍なくみられるのに対して,グループAbおよびグループBは,分布域の中心となるフィリピンのルソン,ミンダナオ,サマールの大きな島に限定した分布がみられる.

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© 2009 日本衛生動物学会
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