日本医真菌学会総会プログラム・抄録集
Print ISSN : 0916-4804
第52回 日本医真菌学会総会・学術集会
セッションID: P-072
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皮膚真菌症
リンパ管型スポロトリコーシスの1例
*宮崎 久美子大圃 詩子照井 正青山 一紀三上 襄
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抄録

80歳男性(東京都板橋区在住)。初診の約2ヶ月前に左前腕に虫刺されのような皮疹が出現し潰瘍となり増悪したため、平成19年4月17日当科紹介受診。生活歴:庭の植物の手入れ、風呂の薪の準備で手の擦過傷や刺傷が日常的にみられていた。現症:左前腕部屈側に径3 cm大までの不整形の潰瘍が11個線状に配列し、上腕部屈側に径1 cmと1.5 cmの発赤した皮下結節を2個認める。左腋窩リンパ節は触知せず。病理組織学的所見:潰瘍部・結節部ともに異物巨細胞が混在する慢性肉芽腫性炎症像。星芒体(-)。Grocott染色で菌要素(-)。一般細菌培養、抗酸菌培養:菌陰性。真菌学的所見:Sabouraud Dextrose Agar(SDA)培地で黒色のコロニー形成がみられ、1%Glucose添加Brain Heart Infusion(BHI)培地では25℃で菌糸状、35℃で酵母状の温度依存性二形性発育がみられた。さらに18SリボソームRNAをコードするDNA塩基配列の解析を行ったところNCBIデータベース上のSporothrix schenckiiの塩基配列と完全に一致した。以上より、本菌をSporothrix schenckiiと同定し、本症をリンパ管型スポロトリコーシスと診断した。イトラコナゾール(ITCZ)内服と温熱療法併用にて内服開始後4週間で潰瘍はすべて上皮化した。スポロトリコーシスの疫学、治療、分子生物学的同定法について文献的考察を加え報告する。

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© 2008 日本医真菌学会
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